1828年製の懐中時計
手に入れちゃいました

バージ式の鍵巻き懐中時計だよ
 とても古い感じの時計を入手しちゃいました。
 これは5.5cmある大きめの懐中時計で、ずっしりとした重さの銀製2重ケースが付属。また綺麗な状態の陶製文字盤には金色の時間針が付いていました。
 外見は秒針もなくとてもシンプルなんですけど、中身はちょっと違うんです。バージと呼ばれる今は廃れた古いタイプの脱進機を持ち、またフュージという鎖引きのゼンマイ伝達構造を持った懐中時計なんですよ。
 この様に風防をパカッと開けて、専用の鍵で時間合わせを行います。またゼンマイも同様の鍵で巻き上げます。フル巻き上げで1日半しっかり稼動!!
 友達の前でポケットからさり気なく取り出し、鍵を差しクリクリってゼンマイを巻いちゃったりしたら、注目を浴びちゃうこと間違いなし、話の種がもう1つ増えそうですね。。。
 銀ケースには、ライオン・豹の顔・小文字の"n"が刻印、ホールマークと言われるものですね。あとHJのサインもありました。
 このホールマークと言うのは、イギリスの銀製品に必ず付けなければならない検定印で、銀の素材や検定場所、製作年などが記されています。
 ちなみにこの懐中のライオンマークは銀92.5%製(スターリングシルバー)、豹の顔はロンドン検定所、nは1828年、HJは工房名。つまりこのホールマークにより、ロンドン地方にあるHJ工房にて1828年にシルバー925を使って作られたケースであることが分りました。
 メカを上から覗くとこんな感じ、金ピカの真鍮製です。
 カチッ・カチッと動くテンプの上には綺麗なリーフ柄のテンプ受けがあります。このテンプ受けの装飾はバージ懐中に良く見られる特徴で、17.8世紀の初期タイプではプレートにも華やかな彫り物が施されていた様です。
 メカのプレートにはS.BartlettとMaidstone 9423って筆記体で書いてありました。どういう意味だろうと思っていたところ、古懐中に詳しい方(けいさん)に教えて頂いちゃいました。S.Bartletとは時計師の名前で、1821年から55年まで活躍されていたSamuel. Bartlettさんの事らしいです。この時代の時計師さんは年に1,000台ほど製作していたとの事ですし、シリアルナンバーが9423番ですから、ケースの1828年というマークと この時計の製作年はちょうど一致すると鑑定して頂きました。
 ロンドン近郊のメイドストーンに住むS.バートレットさんの工房で、1821年より数えて9,423番目に作った時計がこの懐中であると判明しました。歴史を重んずる国イギリスでは、時計にもしっかり製作記録が残されているのですね。
 メカを横から見るとこんな感じ。立体的な厚みのある作りをしています。
 この古い機構であるバージ脱進機の仕組みを説明するのは難しいのですが、王冠状の4番車と横軸方向に交わる歯車(これも王冠みたい)が天真に付いている旗状の突起を蹴ってテンプを回しているっていう感じかな(分りズライ)。
 脱進機以外にも特徴があって、下の画像の様にゼンマイはチェーンで引かれているんですよ。これはフュージ機構と呼ばれ、ゼンマイの巻き始めと巻き終わりのトルクが均一になるように、チェーンを介しピラミッド状の部品にゼンマイの動力が伝達する仕組みとなっています。
 この様な立体構造の為、時計はどうしても厚ぼったくなってしまい、また脱進機の特徴として持ち歩くと時間の誤差が出てしまうので、19世紀の半ばには新しい機構のメカに取って代わられ、バージ式の懐中は姿を消してしまったそうです。
 入手時にメカはゴミだらけだったので分解清掃にトライしてみて、現在カッチン・カッチンといい音を響かせて時を刻んでくれています。バージ脱進機の懐中時計は古い機構なだけに誤差が多く、1日30分や1時間くるうのは当たり前って何処かで聞きましたが、実際は違いました。分解して調整してみた結果、なんと平置きで日差0分にまでなりましたよ。もちろん持ち歩いたり気候によって誤差は出るでしょうけど、案外使えるものだなって驚いてしまいました。古いとはいえ飾っておくだけでなく、時計の本来の姿である実用性も楽しめそうですよ。
 そうそう、この懐中にはアウターケースと呼ばれる銀製のペアケースも付いていました。ケースは普通の懐中3個分ぐらいの厚さ!!ズングリしている感じです。重量も3個分くらいあるかな。手の中で ずっしりとした重みも味わう事が出来ちゃったりします。
 今回とても古いタイプの懐中時計を手に入れて、その手作り感のある機械やケースの作りに実際触れみる事により歴史を感じられたのですが、前述の様なホールマークや時計師の存在も知る事ができ、この時計の歴史的な背景も目の前に映ってくる感じがしました。(この時計について調べて頂きました けいさん、あならさん どうもありがとうございました)
 で、この歴史が感じられる懐中時計の入手価格が気になる方もいらっしゃるかと思うのですが、イメージするより ずっとずっと安かったんですよ。バージは使えないっていう神話(?)からか、厚ぼったいからか、いま人気が無いみたいですね。オークションでの入札者もあまりいませんでした。ネットオークションでは滅多に見つかりませんけど、また何か安いバージ懐中がゲット出来たらいいなって思っています。
銀製バージ脱進機式
  フュージ
鍵巻き
懐中時計

(製 造 国)   イギリス
(製造年代)  1828年
(大 き さ)   直径5.5cm
         厚さ2.5cm
(ケース素材) 銀無垢(925)
         ペアケース
(文 字 盤)  陶製(ポーセリン)
(風  防)    厚いガラス製
(時間合わせ) 鍵合わせ
(石  数)    無し(?)
(脱 進 機)   バージ式
(テ ン プ)    平テンプ
(稼動時間)   約1日半
(日  差)   平置きで+-0分




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